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2017.08.05

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【『道を継ぐ』刊行記念対談】人生に迷ったらカリスマ女性美容師に聞け! ACQUA小村順子さん(前編)〜天職は、努力の「向こう側」からやってくる〜

49歳でその生涯を閉じた伝説の美容師・鈴木三枝子さんを描いた『道を継ぐ』(アタシ社)が「私もこんな風に生きたい!」「女友達みんなに読ませたい!」と大反響。なぜいま、女性美容師の生き方がこれほどまで一般の女性に支持を受けているのでしょうか。 HAIRでは、『道を継ぐ』の著者の佐藤友美さんと、カリスマ的人気を誇る女性美容師さんの対談連載をスタートします。

【前編】天職は、努力の「向こう側」からやってくる

連載第1回目のゲストは、美容業界をリードする有名サロン・ACQUA(アクア)のエースデザイナー、小村順子さん。カリスマ美容師ブーム時代、女性美容師の代表的存在として注目を浴び、男性社会のなかで紅一点、活躍してきた存在です。男性スタッフや、お客さまとの信頼関係づくりなど、今の時代に私たちが強く美しく生きるヒントを『道を継ぐ』の著者・佐藤友美さんが聞きました。

仕事の成功は「向き不向き」では決まらない

自分の仕事の価値は、人が決めてくれる

佐藤:今日は久しぶりにお会いできてうれしいです!

小村:何年ぶりでしょうか。今日はよろしくお願いいたします。

佐藤:鈴木三枝子さん(※『道を継ぐ』の主人公)と生前交流があった小村さんに本を読んでいただいたのは、本当に光栄です。

小村:『道を継ぐ』は美容師に限らず、多くの女性にとって共感できる内容だと感じました。

佐藤:鈴木三枝子さんの生き方って、女性が働く上でぶつかる悩みや葛藤に、ひとつの解をくれているんでしょうね。

小村:私も共感するポイントがたくさんありました。これがその付箋です。

佐藤:こんなに!

小村:これでも厳選したんですよ。まず心に響いたのは仕事への向かい方ですね。「自分の仕事の価値はお客さまが決めてくれる」という言葉です。

佐藤:このフレーズにぐっときたという女性読者からの感想、多いです。

小村:最近は若い人ほど合理的で、いかに自分をプロデュースするかを重視していますよね。もちろんそれも必要ですが、まずは目の前の仕事を一生懸命することのほうがはるかに大事。それが次につながるかどうかは、世の中が決めてくれることなんですよね。

佐藤:自分の価値は、自分ではなく、周りが決めてくれる、と。

小村:ええ、そう思うんです。

その仕事は本当に「相手」のためになっている?

小村:人って、意外と客観性を持てないものだと思うんですよね。たとえば「お客さまのためにやりました」と言っていても、実は自分がやりたいことを、さも相手の要望かのように都合よく解釈しちゃっていることが多いんです。

佐藤:それは、どんな仕事にも当てはまりそうですね。私も最近になって「相手の立場に立って考えるのって、口で言うよりずっと難しいな」ってしみじみ感じるようになりました。

小村:だから、『道を継ぐ』の中にあった「お客さまが嬉しいと思うことなら、迷わずやりなさい。自分が嬉しいと思うことは、よく考えてやりなさい」という言葉にすごく共感しました。「そう!私が言いたかったことはこれだよ!」って(笑)。
そのくらい自分に対して厳しくして、ちょうどいいくらいなんですよね。この言葉に出会って以来、スタッフ教育の場でいつも使わせてもらっています。

仕事に「向き不向き」なんて存在しない!

佐藤:今回、小村さんには自分の美容師としての自己評価をしていただいたんですが…。意外と点数が低くてびっくりしました。

小村:私、実はこの仕事向いていないんですよ(笑)。

佐藤:20年以上美容師をやっている小村さんから、今、衝撃の告白が⁉

小村:向き不向きでいうと向いてない。私、こんな表参道の真ん中でおしゃれピーポーの中で働くようなタイプじゃないんです(笑)。

佐藤:雑誌でもテレビでも、こんなに活躍してらっしゃる小村さんが…。

小村:伊勢丹にも表参道ヒルズにも、人生で数回しか行ったことないんですから。髪を切って人に喜んでもらえれば幸せというだけの田舎出身の人間なんです。

佐藤:そんな話、初めて聞きました。

小村:でも、誰よりも美容の仕事が好きだったんです。だから続けられました。能力以上の力を発揮できるのって、本当に好きかどうかが大切なのかなと思います。
ACQUAの入社式でもよく話をするのですが、仕事は向き不向きじゃない。でも、仕事に向かっていって、努力を重ねて仕事をものにしたときに、初めて「向いた仕事」になるんです。

佐藤:いま、すごく勇気をもらいました。実は私も、本当に書く仕事向いてないなって落ち込むことが多いんです。

小村:えー!こんなにいい文章書いてるのに⁉

佐藤:まだまだです。もう16年も書き続けているのに、全然うまくならない。でもこの仕事が好きだし、一生これで食べていきたいと思っているので、頑張って勉強してるんです。 だから小村さんにそういう風に言ってもらえると「このまま続けていっていいんだ」と救われた気持ちになりました。

小村:自分で「この仕事は天職です」って言うんじゃなくて、人から「天職だね」って言われたときが本物なんです。佐藤さんもそうなんじゃないですか。自分が仕事を選ぶのではなく、世の中がふさわしい仕事を与えてくれる。だから努力を怠れないんですよね。

「何を言うか」ではなく「どう言うか」で人は動く

伝え方次第で、結果は変わる

佐藤:ACQUAではずっと男性美容師さんが幹部のポジションを占めていましたよね。男性社会のなかで、小村さんはどうやって自分の立ち位置を確立していったのか、前から聞きたかったんです。

小村:入社当時、女性スタイリストはゼロでした。完全男社会のなかで、自分の意見を聞いてもらうためには、まず、絶対的な実力をつけなければいけないんだと思いましたね。

佐藤:実力をつけるということ以外に、自分の意見を聞いてもらうためにした工夫はありますか?

小村:「すごくいいと思います」「共感します」と相手を尊重してから「こうも思うんですけど」と自分の意見を伝えるようにしていました。

佐藤:すごく大人。

小村:いやいや(笑)。私も最初の頃は感情的に意見を言って先輩から反感を買っちゃったり、いろいろやらかしたんですよ。それで気づいたんですよね。「何を言うか」より「どう言うか」のほうが大切なんだって。

佐藤:伝え方次第で相手の印象も、結果も変わってくるということですね。ここに悩んでいる女性は、いっぱいいると思うので、大きなヒントになりそう。

小村:正論が必ずしもいいわけではないんですよね。グレーなことも受け入れつつ、でも、「ここは譲れない!」っていう部分だけは慎重に言葉を選んで伝える。そこは臆せず伝えられる人でありたいと思っています。あと、普段から良い関係性があるかという事も、言葉以上に大切かなと思います。

「1%の非を認める」ことが、人間関係を円滑にする

佐藤:お客さまから仕事の人間関係で相談を受けることってありますか?

小村:ありますよ〜。以前、「職場の上司とすごくもめて絶縁状態になってしまった」という相談を受けました。

佐藤:それは深刻ですね…。

小村:彼女に非はほとんどなかったようなのですが、私はそのとき「上司からは謝りには来れないから自分から話にいってみたらどうかしら」と言ったんです。

佐藤:自分が悪くないと思っていても?

小村:世の中の揉めごとは、相手が100%悪いということはなくて、99%相手が悪かったとしても自分にも1%は原因があるんですよね。

佐藤:なるほど。

小村:だから「99%相手が悪い」と考えるより「1%の自分の非を認める」ことで、歩み寄りできることって多いんですよね。

小村:たとえば後輩がカラーで失敗したとき、「私の指示が良くなかった。けど、うまく塗れなかったのはあなたの技術力不足だよ」と先に非を認めてから意見を伝えることで、すごく伝わりやすくなるんです。

佐藤:納得です。人と揉めるときって「こっちは悪くない」と思って話すからうまくいかないのか。

小村:先ほどのお客さまも、翌日に上司と和解することができたみたいですよ。

佐藤:良かった~(笑)。小村さんのお話、本当に勉強になります。


後半に続く
撮影/中村彰男

プロフィール

小村順子(おむら・じゅんこ)

ACQUAクリエイティブディレクター。長年美容業界を牽引してきた有名サロンACQUAのトップスタイリスト。日本を代表する女性美容師として、数々の受賞歴とキャリアを持つ。圧倒的な技術と美意識から作り出されるヘアスタイルは、0歳から80歳まで幅広い層のお客さまから絶大な支持を得ている。サロンワーク以外にもヘアショーの審査員や商品開発に携わるなど、活動は多岐に渡る。

佐藤友美(さとう・ゆみ)

日本初のヘアライター&エディター。ファッション誌やヘアカタログの「髪を変えて変身する企画」で撮影したスタイル数は4万人分を超える。「美容師以上に髪の見せ方を知っている」とプロも認める存在で、セミナーや講演を聞いた美容師はのべ2万人を超え、これは全国の美容師の20人に1人の割合にあたる。著書に7万部突破のベストセラーとなった『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、発売即重版となった『道を継ぐ』(アタシ社)などがある。

『道を継ぐ』とは?

49歳でスキルス胃がんによってその生涯を閉じた伝説の美容師・鈴木三枝子を描いたノンフィクション。今なお人々の心に残り、動かし続ける彼女のメッセージとはどのようなものなのか。1年半の歳月をかけ、191人の関係者に取材を敢行した先にたどり着いた「答え」は、働く女性にとって、強く心に響くものがある。「働き方・生き方を見直すきっかけになった」と、年代・世代を超えて感想が寄せられており、業界を超えて大きな反響を巻き起こしている。

HAIR
HAIR編集部

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