更新日:2018.12.06
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Aguが示す!サロン業界の新しい働き方論

まだまだ古い体質が目立つ美容業界において、300店舗以上のサロン展開や独自のフランチャイズ独立制度など、革新的な経営方針で業界をリードするAguグループ。社長である市瀬一浩さんにグループの成り立ちの経緯や、今後の展望についてお話を聞きました。

美容師になろうと思ったきっかけ

 

 

野球少年で高校のときに甲子園出場もできたのですが、卒業するまでずっと坊主だったんです(笑)。卒業後にはファッションや髪形に興味を持つようになりました。
将来は手に職を付けたい気持ちがあったり、今思えば友人の母親が美容師だったことも影響していたかもしれません。
僕と同世代であれば同じ気持ちになった人もいるかもしれませんが、当時放映されていたドラマ『ビューティフルライ フ』の木村拓哉さんを観て「これだ!」と思ったのがキッカケで美容師を目指しました。

Aguグループ設立の経緯やキッカケ

2009年、27歳のときに個人サロンとしてAgu Hair Salonをオープンしました。
それまでは美容師のあこがれの聖地、青山・表参道で働いていましたが、低賃金や労働環境が悪かったり、上下関係の厳しさなど美容業界の古い構造、雇用形態は問題だと思うようになりました。そこを変えないと、アシスタントや美容師になりたい人のモチベーションに繋がらないし、なり手が減るだろうなと考えていたんです。
アシスタントをしていたときから美容師業界の皆がモチベーションを高く継続し、長く続けられる職業で、平等に評価される仕組みを常に模索するようになりました。

創業当時の苦労話

お店はまず1人で始めました。なので相談できる人もいなくて、『ヒト(スタッフ教育)』では苦労しました。新しいスタッフが入ってきては辞めての繰り返し…、今思えば自身の思い違いから起きるコミニュケーション不足と、当時実績がない中でのコミュニケーションは、結果伝えきれていなかったのだと思います。
環境は良いものを提供していたつもりでしたが甘えがあったんだと思います。

あと、「サービス業ってこうあるべき」という主観的な考えをスタッフにも押し付けてしまっていたように思います。
でも、今思えば単なる勘違いでした。それによって、スタッフと経営者との溝を自分から作ってしまっていたような気がします。

スタッフから教えられたコト

そんな中、あるスタッフ達に言われたように思います。「オーナーは間違ってる!」と。そのときにハッとしました。覚悟を決めてやらないとと思ったんです。
当時は、自分一人に対し20名ぐらいのスタッフだったので、27歳の私には精神的にキツかったのを覚えています。

特に、自分より年上のスタッフに指示するのは難しかったことをよく覚えていますね。

コミュニケーションの数は短い時間でも積極的に声をかけて、回数を最大限に増やしました。例えばメールやチャットで済む話も夜中何時になろうが電話して納得してくれるまで朝まで電話することも、度々あったことを覚えてます。

数年で全国300店舗以上まで増やすことができた理由

転機はフランチャイズ経営を取り入れたことだと思います。

フランチャイズ化することになった経緯として、まず、自分自身が出来る範囲にはどんなに頑張っても限界があるということに気づいたことです。そして、業界を変えるという思いでサロンを立ち上げたのでスタッフにも私と同じ立場(経営者として)で、自分の可能性を見出して欲しかった。
そのためには、フランチャイズ化することがベストだと考えました。

フランチャイズのオーナーになることは相当な覚悟が必要で、それぞれが成功しなければ後が続かないと思います。
一人一人のオーナーが最大限努力し、またAguグループですべてにおいてのデータを共有できていること。また、レベルの高いバックオフィス業務を提供できているので全国300店舗以上にまで達成できたと思います。

基本に忠実!徹底したルール

あと視点は違いますが、シンプルに余計なお金を使わないこと(笑)。

経営者になると節税という観点から経費を使ったりする人もいますが僕らはしません。
事業投資に関連するものだけ集中して資金をつぎ込んでいます。多角化もするつもりはありません。
スタッフがより良い環境でベストパフォーマンスが生み出せるように、それだけに注力して私達は時間を使っています。

①必要なお金は惜しまず使う
②事業以外余計なことをしない
③社内でのコミュニケーションを最大限にとる

この3つを徹底したことが、全国300店舗以上までになれた源泉だと思っています。

Aguグループのすごさのワケ

 

Aguグループが掲げる採用コンセプト「頑張りがキチンと評価される。Agu.は生涯はたらける美容室です。」

業務委託という働き方を推奨する理由

私がもともと正社員として働いていたり、業務委託を経験した立場から考えて、これから美容業界に人が集まるためには業務委託の制度を整える必要があると思ったんです。雇用されてしまうと長時間拘束されてしまう。
たまたまかもしれませんが、Aguグループには女性スタイリストが多く、ママ美容師も多いですね。そういった背景もあり、どうやってそういう人を増やしていこうか考えたときに業務委託という制度がマッチすると考えました。
Aguグループは、ブランクはあっても戻ってきたい人の受け皿になるべきだと思っています。

Aguに向いている美容師はどんな人?

ぜひ野心を持って欲しいです。オーナーになりたいとか、金持ちになりたいとか、モテたい!という理由でも良いと思います。野心があることは仕事において大事な源泉です。それがAguにとっても非常に重要で、改善すべきことがあればどんどん意見が欲しいです。
最大限応えたいと思っていますし、僕らは毎年成長したいと思っているんです。

Aguがこだわる独自の教育制度とは?

3~5年が一般的だと思いますが、Aguグループでは1年でスタイリストになります。期間だけで見ると無茶に見えるかもしれませんが、決して無茶はしていません。

だいたいの美容室は、営業前後にしか練習ができないと思います。また、基本的に練習時間は給料が発生しないし、休日出勤にもならないので、1年間で30%くらいの人が辞めてしまう。

Aguグループでは、週5日のうち3日は日中に仕事として練習をしています。1週間でいうと24時間/週が練習時間です。残りの2日間はサロンワークを通し て練習します。 

通常の美容室だと練習は出来て1日2時間くらいでしょうか。5日間でも10時間程度です。普通の2倍くらい練習できるからこそ1年間でスタイリストとしてデビューできるのです。

美容師になってから3~5年で、ある程度やりたい方向性が決まってきたときにスタイリストデビューし、その後に経営者としての道を進む流れが一般的だと思います。それがAguグループだと1〜2年早くなるんです。

その先には、会社やサロンを経営するという道がAguグループにはあります。
「私なんて…」と思う人でも、一度は経営者になってもらいたい。そこで得る経験や能力は、絶対に生きる上での糧になることはまちがいないので、皆に経験して欲しいです。

次々と輩出されるオーナー育成の仕組み

教育を投資として考えているので、休みは完全週休2日制にしています。その休みには練習もダメです。

「しっかり休んで遊んでください」「しっかり友達ともコミュニケーションしてください」「そして是非Aguを発信してください」。
そういった方針の結果、新卒の離職率は0%になっています。

グループでマネージャークラス(3~4年目)のスタッフが自主的に新卒の教育をしてもらっています。各店舗ごとや全国に複数店舗が集まれる場所があるので、そこでも練習を重ねています。

オーナーになる人が毎年数名いますが、マネージャーとして店舗で売り上げを上げ、エリアで5~10店舗くらいを束ねる能力を発揮してくれていれば、年2回の評価会で推薦があった者がオーナーになれる資格を取得できます。

Aguグループが描く今後の展開は?

生活の一部になければいけない存在(Aguグループ)になりたいと思っています。そのためにまずの目標は、海外も含め全国に1000店舗を実現したいと考えています。
まだ誰も到達したことがない数字です。

日本全国に人がいて店舗があるからこそ、髪を切る以上のサービスと新しい価値を提供していきたいと思ってます。だからこそ、株式公開が必要だと認識しています。
考えていることは沢山ありますが今はまだ話せません。

今後の美容業界への想い

若い人に美容業界に期待して欲しい。それだけです。
必ず未来ある業界に変えてみせます。なので、失敗を怖がらずどんどん経験をして欲しい。それだけです。
それによって自分の経験値を上げて、その先の未来を勝ち取って欲しいです。

控えめだが、一つ一つ丁寧に話す市瀬さんからは、美容の仕事に生きる確かな覚悟と、業界に携わる人への思いが伝わってきました。人に重きを置き、人を大事にするAguグループのさらなる飛躍は確かなものだと確信させられました。

HAIR編集部

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