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インタビュー

【『道を継ぐ』刊行記念対談】人生に迷ったらカリスマ女性美容師に聞け! VeLO赤松美和さん(前編)〜「違い」があるから面白いし、みんな輝く〜

49歳でその生涯を閉じた伝説の美容師・鈴木三枝子さんを描いた『道を継ぐ』(アタシ社)が「私もこんな風に生きたい!」「女友達みんなに読ませたい!」と大反響。なぜいま、女性美容師の生き方がこれほどまで一般の女性に支持を受けているのでしょうか。『道を継ぐ』の著者の佐藤友美さんと、カリスマ的人気を誇る女性美容師さんの対談連載です。

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【前編】「違い」があるから面白いし、みんな輝く

第2回の対談ゲストは人気サロンVeLOの赤松美和さん。個性的なオーラを放つ赤松さんに憧れる顧客や同業者も多いのですが、彼女の「自分らしさを大切にする働き方」には、早逝した父と師匠の影響がありました。

あなたが生きたあとにはどんな道が残るだろう

「長生き」することが人生の目的ではない

佐藤:先日は『道を継ぐ』について、ご丁寧なご感想のお手紙をいただきまして、ありがとうございました。

赤松:あの本を読んでから、佐藤さんと語りたいって思っていたんです。鈴木さん(『道を継ぐ』の主人公、鈴木三枝子さん)には、もう、シンパシーだらけでした。

佐藤:例えばどんなところですか?

赤松:長いものに巻かれないところ、正義感のあるところ、正しいと思ったらケンカしてでも意見を伝えるところ…。「そうそう!」って思うところが多かった。
私の師匠のタカさん(注:44歳でお亡くなりになった赤松さんの師匠、故・植村隆博氏)の生き方にも通じるところがたくさんありました。

佐藤:私も取材をしていて感じましたが、なんというか、とても「濃く、太い」人生ですよね。

赤松:タカさんも鈴木さんも、40代でお亡くなりになっているけれど、普通の人が80年かけてもたどり着けない世界を見ていた人たちですよね。そして亡くなったあとにも、多くの人たちに影響を与え続けている。

佐藤:おっしゃるとおりですね。書籍にも書かせていただきましたが「その人が生きたあとに道が残る」生き方だなあと感じました。

赤松:そう考えたら、人って長生きすればいいというものじゃないし、長生きすることが人生の目標ではないんですよね。いつも考えていることだけど、『道を継ぐ』を読んで改めてそう感じたんです。

損得でもお金でもなく「幸せかどうか」

佐藤:以前、赤松さんにお話を伺ったとき、「人生に終わりがあることをいつも意識している」と言ってらっしゃいましたよね。

赤松:誰もが「『本当はこうしたかった』と後悔しながら死にたくない」と思っていますよね。でも多くの人は、病気になるまでは人生に限りがあることを意識しない。
私は父を早くに亡くしているので、それを若いときから意識してきたように感じます。

佐藤:そのことが、赤松さんの人生観や働き方にも影響を与えているんでしょうか。

赤松:そう思います。だから私、人生の目標はとにかく「ハッピーに楽しく生きること」なんです。すべてのジャッジが「面白い」か「面白くないか」なんですよ(笑)。

佐藤:うん。わかります(笑)。赤松さんは、気持ちいいくらい決断がはっきりしてますよね。

赤松:面白ければやるし面白くなければやらない。損得ではなく、お金でもない。そう考えたら、人と比べる必要はないし、自分にウソをついて無理をする必要もない。

佐藤:誰から見てもブレがない生き方をされていると感じます。
事前にお伺いしていた赤松さんの仕事に対する自己評価がこれですよね。赤松さんほどの実力であれば、オール5では?と思ってしまうんですけれど。

赤松:もちろん常に自信を持ってお客様を迎え入れる準備はしています。でも、技術に限らず、ゴールはないものだから満点ではないかなと。

自分をさらけ出してきたから「らしさ」が確立されてきた

佐藤:赤松さんは普段どんな感じでお客様と接しているんですか。

赤松:自分をつくり込まずさらけ出すようにしています。お客様にもスタッフにもウソのない自分で接しています。

佐藤;赤松さんから感じる独特のオーラというか、日本人っぽくないオープンマインドな雰囲気の源は、そこにあるんでしょうね。

赤松:自分を20年以上さらけ出し続けてきたから、それが「らしさ」になって、「スタイル」になっていったのかもしれないですね。

落ち込んだときも「仕事」が自分を立て直してくれる

佐藤:常に自分を「さらけ出す」となると、自分自身がリアルに元気でいなきゃいけないですよね。毎日同じテンションをキープできますか?

赤松:落ち込んで今日は誰とも話したくないと思うときもありますよ。

佐藤:ですよね。

赤松:周りから見たら私って能天気な人に見えるかもしれないけれど、私の人生をすぽっと誰かにかぶせたら、その人は耐えられないかもしれないくらいの苦労もしてきたと思います。
でも、どんなに落ち込んでいても、一晩寝て、お客様やスタッフと向き合うと、自然と自分を立て直すことができるんですよね。

佐藤:そこがプロフェッショナルな接客業であるところなんでしょうね。

違いを認め合うから「束」になったときに面白い

夫婦経営がうまくいく秘訣は、圧倒的なリスペクト

佐藤:赤松さんは鳥羽さん(注・ご主人でVeLO代表の鳥羽直泰氏)と夫婦でサロンを経営されていますよね。仕事でも家でも顔を合わせるのって、大変じゃないですか?

赤松:私たちはもともと美容師という技術職の先輩後輩です。だから技術に対する圧倒的なリスペクトがあるんですよね。相手を自分のやり方に染めようと考えたことは一度もありません。
それに、カットも経営も「違い」がやっぱり面白いんですよ。鳥羽からはいろいろ学びましたよ。

佐藤:例えば?

赤松:鳥羽はスタッフの細かい機微や気持ちの変化を敏感に察知して、一人ひとりに時間をかけて向き合っていくんですよね。

佐藤:辛抱強いんですね。

赤松:しつこいと言ってもいいくらい(笑)。

「幸せな生き方」は人それぞれ違う

赤松:だから鳥羽に教わったことのひとつは「諦めないこと」です。
例えば意見が食い違うと、私は面倒になって「うん、わかった、わかった」と適当な返事をしちゃうタイプだけど、鳥羽はそれがたとえ深夜であっても、「いや、まだわかってないよね?」と食い下がってくる。

佐藤:想像がつきます(笑)。

赤松:でも、そうやって自分の意見をとことん伝えようと思うと、自分の言葉の矛盾点にも気づけるときもあるんですよね。

佐藤:なるほど。

赤松:最初は鳥羽に対して「なんでも突き詰めて考えるのって、疲れない?」「リラックスできてる?」と心配したこともあったんですが、あるとき気づいたんですよ。「あれ?ひょっとして、この人は『きちんとしていること』が一番幸せでリラックスできるのか!」って。

違うからこそ、みんな輝ける

赤松:スタッフも同じですね。一人ひとり、幸せの定義も楽しさの定義も違う。だから、それぞれのやり方で幸せをつかんでくれればいい。

佐藤:お店としての統一性やブランディングはどう考えていらっしゃいますか?

赤松:画一的な「VeLOっぽさ」は求めてないです。セレクトショップのように、一人ひとりが違う色を持ったブランドでいい。
違う人同士が「束」になるから、面白い。「みんな違うけど、なんか面白いよね」というチームを目指しています。

赤松:だからスタッフには、とにかくつまらない人になってほしくない、と思って接しています。いい子ちゃんでいる必要はないし、イエスマンでいる必要もない。

佐藤:意見の違いはどう調整していくんですか?

赤松:スタッフ同士、よくケンカしてますよ。私は「やっちゃえ、やっちゃえ!」って見てますね(笑)。
実際に話し合ってみないと解決策なんかわからないから。面倒かもしれないけど、とことんぶつかって話し合ったら、目指してる方向が同じだとわかったり、相手をすごく好きになることも多いみたいですよ。

佐藤:最近の若い人たちって、そういうぶつかり合いを避けるのかと思っていましたが…。

赤松:いや、意外とスポ根ですよね(笑)。『道を継ぐ』でも、鈴木さんとスタッフがぶつかるシーンがありましたよね。

佐藤:はい、そうなんです。実はこの本が出てから一番驚いたのが、20代、30代の方からの感想がすごく多かったことなんです。若い世代の人たちも、心の中では密なつながりを求めていたのかなあと感じました。

赤松:そうかも。若いスタッフに「親にも怒られたことないのに、土足でずかずか入ってきますね」と言われたこと、あります(笑)。でも、そう言いながら、結構嬉しそうなんですよ。

佐藤:きっと、一生懸命生きたい、働きたいと思うのに、時代も世代もないんでしょうね。


(後編に続く)
撮影/中村彰男 

プロフィール

赤松美和(あかまつ・みわ)

VeLOディレクター。44歳の若さで死去したDADA CuBiC植村隆博氏に師事、その後夫の鳥羽直泰さんとともにVeLOを立ち上げた。日本を代表する女性デザイナーとして、業界誌・広告などの撮影やヘアショー、セミナーなど幅広く活躍している。カットのこだわりは「再現性」、シンプルな中にさらっとエッジを効かせたスタイルに、多くの支持を集めている。

佐藤友美(さとう・ゆみ)

日本初のヘアライター&エディター。ファッション誌やヘアカタログの「髪を変えて変身する企画」で撮影したスタイル数は4万人分を超える。「美容師以上に髪の見せ方を知っている」とプロも認める存在で、セミナーや講演を聞いた美容師はのべ2万人を超え、これは全国の美容師の20人に1人の割合にあたる。著書に7万部突破のベストセラーとなった『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、発売即重版となった『道を継ぐ』(アタシ社)などがある。

『道を継ぐ』とは?

49歳でスキルス胃がんによってその生涯を閉じた伝説の美容師・鈴木三枝子を描いたノンフィクション。今なお人々の心に残り、動かし続ける彼女のメッセージとはどのようなものなのか。1年半の歳月をかけ、191人の関係者に取材を敢行した先にたどり着いた「答え」は、働く女性にとって、強く心に響くものがある。「働き方・生き方を見直すきっかけになった」と、年代・世代を超えて感想が寄せられており、業界を超えて大きな反響を巻き起こしている。

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